いまさら読書

おだやかに生きていくために試行錯誤するブログ

これはやがてくる人類の未来の問題?「奇跡のリンゴ」

こんにちは。

以前別の記事で少し紹介した本、せっかくなのでこちらで自分の感想含め記録します。

 

あなたは普段、野菜や果物をなにげなくスーパーや八百屋で買ってきて食べる人でしょうか?おそらく現代人の多くがそういう生活スタイルでしょう。

でも、私もそうですけど、その作物をどこで、誰が、どれだけ愛情をかけて育てているか、どんな苦労があるのか、深く考えたことがないと思うのです。

 

やっぱり、自分の目に入ってこないものは何でも、実情がわからなくなるものです。

 

この「奇跡のリンゴ」という本は、青森のリンゴ農家、木村氏が無農薬でリンゴを立派に育てるまでを取材した、ドキュメンタリー風なお話です。

 

実はこの本、私が高校生の頃、当時の国語の先生が

「これはとてもいい本だ。みんなもぜひ読んでほしい」

と、チラッと紹介していたので、本のタイトルそのものは結構前から知っていたのです。

ですが、当時私の学年はなかなか荒れている輩が多く、誰も先生のその言葉に耳を貸していなかったのでした(先生スマン)。

けど、最近になってふとこの本のことを思い出して、読んでみたのです。

 

そしたら、

 

控えめに言って、ものすごくいい本じゃねーか!

 

と、私にしては珍しく感動したのでした。

 

 

リンゴを農薬ゼロで育てるのは不可能?

リンゴ農家の間ではそれが常識だそうです。 

現在の我々が食べているリンゴは、人類がより美味しいモノを求めて品種改良していった結果できたものであって、本来自生していた原種ではない。それはリンゴに限った話ではないのだけれど、今のリンゴは農薬を使用する前提の品種だから、農薬なしでは虫たちにすぐやられてしまう。

しかし、本屋で偶然棚から落として角をつぶしてしまったためにしょうがなく買った本に「何もやらない、農薬も肥料も何も使わない農業」について書かれているのを見て、木村氏は思います。

 

自分はリンゴを栽培するために、春先から九月の収穫前までに十数回の農薬散布を行っていた。リンゴの葉は農薬で真っ白になった。そうしなければ、病気や虫からリンゴを守ることは出来ないと信じていたからだ。

けれど、本当にそうなのだろうか?

出典:奇跡のリンゴ

 

 

どうしてもうまくリンゴが育たない

奥様が農薬に弱いこともあって、木村氏は無農薬での栽培を試みます。

そして考えうるあらゆる方法でリンゴの木を守ろうとします。とにかく手作業で一匹一匹害虫をとったり、酢をまいたり・・・

 

けれど、どの木もあまり元気にならない。むしろ枯れていく。

まわりから何をやっているのかと陰口を叩かれる。

そして、リンゴの収穫がゼロになり、収入は限りなくゼロに・・・

 

税金の滞納が続いて、なんとリンゴの木に赤紙を貼られてしまいます。

 

人の欲望のために手を入れ変えられる自然

木村氏がこんなどん底から、どうやってリンゴを生き返らせたのか、続きはぜひ本を読んでほしい。途中途中、涙なしには読めないシーンもあります。木村氏のやさしさ、人のよさが、どのページからも痛いくらい伝わってきます。

 

私がこの話を読んでいて思ったのは、人間が自分たちの目の前の欲望のために技術を進化させていった結果の、さらにその先に待っているかもしれない未来のことです。

 

現代の、農薬や機械といった技術に頼り、いちどにたくさん、おいしい作物をどんどん収穫していくというのは、長い目で見たら無理がある。確かにその技術のおかげで今の私たちが食べるものにも困らずに一年中おいしいものを食べられるのは事実です。

 

けれど、農薬を使わないと生きられないような作物しかこの世界にないとすると、もう私達は農薬や薬から抜け出せなくなってしまう。

もちろん、無農薬栽培をしている農家さんもいらっしゃると思います。けど、今現在の経済で、全てを無農薬ではまかなえない。

 

木村氏は言います。

 

「自然の手伝いをして、その恵みを分けてもらう。それが農業の本当の姿なんだよ。そうあるべき農業の姿だな。今の農業は、残念ながらその姿から外れているよ。ということはさ、いつまでもこのやり方を続けることは出来ないということだよ。昔は私も大規模農法に憧れたけど、その大規模農法地帯はどんどん砂漠化しているわけだからな。」

出典:奇跡のリンゴ

 

きっといつか、何年も先かもしれませんが、今のやり方では出来なくなるときがやってくるかもしれない。そのとき人間はどうするんでしょうか。

収穫量が減って作物がよくない見た目になっても今までの技術を捨てて昔のように戻るのか、

それともいまさらあの頃に戻りたくないと言って、地球を砂漠の星にしていくのか。

 

無農薬はムリだと言われてきたリンゴが無農薬・無肥料で育つその姿を思うと、ひとつのヒントがそこにあるかもしれないなぁ、と考えさせられます。

 

いかがでしょうか。

Kindle版も出ていますので、気になったらぜひ。