最近は仕事がいわゆる繁忙期で、こういうときは疲れていても読みやすくてスッと頭に入ってくるような、心穏やかになれる本が読みたいなと思っています。
でもまさか、料理がテーマの本で心安らぐとは自分でも予想外でした。
では早速ですが今回読んだのはこちら 土井善晴氏の
「一汁一菜でよいという提案」
この本は、前から本屋で見かけていてタイトルが気になっていたのですが、
うーん、単行本かぁ、文庫版が出たら欲しいなぁ・・・
などと、中身も見てないくせにそんなことを思って買っていなかったんです(本棚はなるべくコンパクトにしたいので、紙の本で買うときはできるだけ小さい文庫本や新書をメインで買っているため)。
でもつい先日ネットで本を漁っていたら、これの文庫版が出ていることが発覚!
あれ?いつの間に?と思い出版日を見たら「令和3年11月1日」
つい最近じゃないか!
というわけで文庫版、買いました。
この本は帯の言葉でもう大体説明がつきます(笑)
ご飯と具だくさんの味噌汁。それでいい。
出典:一汁一菜でよいという提案(帯部分)
もうこの一行につまってますね。
家庭料理はご飯に、具をたくさん入れた味噌汁をおかずにして、もうそれで十分なんだ、毎日献立を考えたりはりきったりしなくていいんだ、と。
多くの人が、ハレの価値観をケの食卓に持ち込み、お料理とは、テレビの料理番組で紹介されるような手のこんだものでなければいけないと思い込んで、毎日の献立に悩んでいるのです。
出典:一汁一菜でよいという提案
でもたしかによくよく考えてみればこんなに献立で悩むようになったのって人類史的には本当につい最近なんじゃないか。料理のレシピや材料の選択肢が広まった、と言ってしまえばそうなんだけど、そのぶんちゃんとしたものをつくらなきゃ、という思考におい入りやすいのもまた事実。
で、なぜこの本が安らぐ本なのかというと、
まず土井氏の文章が静謐で美しい。
静かなお寺や神社の木のそばに腰掛けて木陰の中でこの本を読んでいるような気分。
そしてときどき土井氏の作ったお味噌汁の写真が出てくるんですが、それが飾り気のない、まっさらな素直なかんじがします。ただのお味噌汁の写真に心が落ち着くのです。
この本の中では、単に一汁一菜を勧めるだけでなく、和食にあらわれる日本の精神、いまの和食を作り上げるまでの日本人の営みのようなものを考察していて、はるか遠い過去にまで思いを馳せてしまうのです。
そういう諸々が重なり合って、なんとも言えずまるで瞑想でもしているかのような気分になってくるのです。
そう、お料理の本なのに。不思議な感覚。
この本は毎日のお料理をきちんとしたい、でも忙しくてできないとか、毎日献立を考えていられないとか、そういった人たちにもうひとつの道を教えてくれるかもしれません。
そして最後にこの本を読む際の注意を。
お腹が減っているときには決して読まないでください(笑)。
お味噌汁の写真がカラーで、しかもいい色合いでたくさん載ってます。完全に俗に言う飯テロです。具材もただ一緒にぶちこみました、ってかんじのものが多いのに、美味しそう、そして美しいのです。