こんにちは。
最近仕事がそこそこハードで、睡眠を優先した結果さっぱり読書がはかどっておりません。
通勤電車でも、座れてしまうともう眠くて起きていられない・・・
というわけで、軽めの本なら読む気力がわくかな、とKindleの積ん読の中から読めそうな本を選んでみました。
それがこちら、「パリのすてきなおじさん」
著者の金井真紀さんが、ジャーナリストの広岡裕児さんと一緒にパリを練り歩き、とにかくおじさんばかりを捕まえてお話を聞く、そんな本です。
おじさんといっても、下は20代後半から、上は90代までじつに様々。
いつ頃Kindleに入れたのかあまり覚えてないんですが、Amazonレビューでなんだかやたら評価が高く、コメントが温かい空気に包まれていたのが気になって購入したものの、まだ読んでいませんでした。
とりあえずKindleでこの本を選んで読み始めたら・・・
あれ?表紙の画像がいくつも続いてる・・・?
見ていて気づいたのですが、なんとこの本、帯が4種類あるんです!
本の中で金井氏が描いたパリで出会ったおじさんの絵が1人につき1枚ずつ見られるのですが、その中から選りすぐり(?)の4人が帯に採用されているんです!
本の中身は同じです。紙の本で購入の際はお好きなおじさんをお持ち帰りいただけます(笑)
ひたすらおじさんを集める旅
芸術の都パリで、ただただおじさんをつかまえてお話を聞く。著者の金井氏曰く、この本に出てくるおじさんの大部分はたまたま道端で出会った人(あとがきより)。
突然「お話聞かせてください」って知らない外国人にいわれて、快くOKして、なんならカフェでなにか飲もうか、なんて言ってくれるおじさんたち。
なんだかみんなやさしいなぁ。
そして、この本をただのほんわかしたお喋り集だと思うなかれ、たまたま出会ったおじさんばかりなのにみんなそれぞれの人生や想いがぎっしり詰まっている。
舞台はパリだけどフランス人ばかりではない。難民や移民、貧しい国から出稼ぎで来る人・・・
特に難民、移民関係のお話は、日本にいるとあまり実感がわかないこともあって、そうか、ヨーロッパってこういう事情があるんだ、と勉強になりました。
それらはやはり、良くも悪くも歴史の産物なんだな、と。
他にも、消えゆく昔ながらの技術に誇りを持ちながらも跡継ぎがおらず時とともに失われていくのを見守るおじさんや、
祖国での戦争が激しくなりたったひとりでパリにやって来たおじさん、
自由に絵を描きたいと画商を通さずお客さんに直接絵を売っている、ピカソにも会ったことがあるモンマルトル最後の画家のおじさん・・・
よくもまあ、こんなに色んな人生を経験したおじさんが集まったものだと感心。
時代に翻弄されるおじさん
私がひとり、印象的だったおじさんを挙げるとしたら、「『隠れた子ども』だった人」にでてくるお方、ロベールさん。
彼はかつて戦争中、ユダヤ人狩りを逃れるため、名前や経歴を変え隠れて生きていた子どもでした。
家族のなかで自分だけフランス国籍だったために収容所送りを逃れるも両親や兄弟と離れ離れに。
そうして集められた子どもたちの中でも、年長と年少で分けられ、そこでも運良く年少組に入れられたことで収容所行きを免れます。
ナチスに抵抗するレジスタンスの大人たちに匿ってもらいながら暮らしていきます。
けれど、戦争が終わっても、連れて行かれた家族は帰って来ませんでした。収容所に移送されたユダヤ人リストに家族の名前を見つけたとき、やっとあきらめる気持ちになったのだ、と。
ひとつ違っていたらもうこの世にはいなかったであろう出来事が、ロベールさんの身にあまりにも多く起こっていて、なんだか言いようのないつらさ。
戦争が終わったときはすべてのドイツ人が憎かった、というロベールさん。
けれど終戦から三年、フランスの子どもがドイツの農家に泊まる交流イベントに行ったときに聞こえてきたドイツ語が懐かしかった、という。
実はドイツ語はユダヤ人が使うイディッシュ語に似ている。それで親しい、懐かしい気持ちになった。
金井氏も本の中で言っているけど、自分だったら終戦からたった三年で、ひどい目にあわされたドイツ人に対してそんなふうに思えるだろうか。
彼は言います。
「人間には、人を憎む気持ちがある。権力者がそれを奨励する」
あぁ、権力者は憎む気持ちを利用する、いつの時代も。
「だけど、人は変わることができる。変わらなければいけない」
引用:パリのすてきなおじさん
どんな人にも、それぞれの人生が、物語がある
どのおじさんの話を読んでいても胸に迫るものがあります。「自分はこんなドラマティックな人生送ってない、平凡の極みだ!」って思ったりするけれど、
でもそう思っているのは自分だけかもしれない。
人からみたら、あなたの人生だって十分ドラマティックかもしれない。
だって、世界じゅうにこんなにたくさんの、考えも文化も違う人たちがいるんだから。
宗教、戦争、差別、もしくはそこまで深刻な内容じゃなくても、自分の人生を生きて、たたかうおじさんたち。
そんなおじさんたちを見ているとなんだかやさしい気持ちになって、勇気をもらえます。
自分の人生を、ちょっぴり立ち止まって考えてみるきっかけになるかもしれません。